2001年7月27日、「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台根室本線幾寅駅を訪れたので、その様子を少し。

 明治35年建設の駅舎
 なんと駅正面に「幌舞駅」と掲げられている。そして、駅舎右隅の方の小さな白いプレートに「JR幾寅駅」とある。撮影終了直後に訪れた時にはちゃんと幾寅駅だったので、後で付け替えられたことになる。なお、線路側(列車から見える方)も「ほろまい」。
 ここへはバス等で訪れる観光客が多く、「この路線廃止になったんじゃないの?」と仰る方もおられた。
 駅前には撮影用に設置された丸形ポストをそのまま使用中。ところがその右側にはレプリカの「幌舞駅名板」(プラットホーム用)、左側には映画の説明板が置かれ、ポスタルフォトグラファーとしては手の施しようがない。
 駅舎はたまたま撮影前にきれいに塗り直されていたらしいが、雰囲気を出すために外壁を板張りにしたり天井も白い板を張り付けたりと、「汚く」(地元の高校生談)なっている。荷扱いの窓やその隣のドア、木製のベンチなども復元されていてなかなか良い感じ。窓や扉もアルミサッシから木枠になり、冬は粉雪が吹き込むのが難点。

 設備
 腕木式信号機は、場内が撤去されたものの出発が停止現示で残されている。この時点でJR北海道では腕木式信号機も常置信号機になっているので、本来であれば信号機とみなすはずだが、どういう訳かちゃんと列車は走っている。撮影終了直後は水色のビニルシートで信号腕木を覆ってあった。
 信号リバーは信号所としてホームの横に移設されている。中のリバーは2本、「上出」「下出」の表記がある。ホームの柱は茶色から灰色に戻されている。
 撮影用「便所」も残されている。



 駅周辺
 駅の隣の建物は1階の一部が「鉄道員」の資料展示スペースになっており、改札口や運賃表などが置かれている。入館無料。
 駅前の3つのセットは、そのままでは崩壊する危険があるため、町が400万円を投じて建物内部に細い柱を沢山立てて残しているそう。それらの建物の前には説明板あり。
 また駅前に出店があり、記念グッズや婦人会の差し入れを高倉健が好んで食べ、今では自分で作って食べるようになったという「いもだんご」も販売している。

 映画「鉄道員(ぽっぽや)」を楽しく見られた方も多かったと思います。しかし、鉄道業務の考証からすれば、全くいい加減で耐え難い出来であったと断言しなければなりません。脚本の段階でどうして鉄道会社の協力を仰がなかったのでしょうか。そもそも原作者も、駅長の話なのですからもう少し勉強した方が…。そこが学者じゃなくて作家だなあ。 映画の幌舞駅長もカッコだけなのでそれ故にギャグに見えてしまいます。私個人としては、「乙松くんが始まるザンス、シェー!」で始まった方が似合っていると思っております。まあ、広末涼子の活躍さえ見られればいいという人には余計な話ですが。
 では、タイトルの前後のみ検証してみたいと思います。


 D51が12系客車を牽引して電化区間を行くシーン。SL末期の急行か団体列車と思われる。機関士、信号を確認して「信号ヨシ!」。何が言いたいのだろうか。信号がいつも通り建っているのでヨカッタと思わず口に出してしまったのだろうか。
 正解は(信号機の種類)+(現示の状態)を喚呼する。この場合は閉塞信号の現示を確認したところのようなので、「閉塞進行!」が正しい。

 辞令により駅勤務となった佐藤乙松。さあ、タイトルが出たあと「乙松くんが始まるザンス、シェー!」

1.タブレットを上部引き手に収め4打し、閉塞解除の合図。
 相手駅からの椀形電鈴が4打し応答、しかしチン、チン、チン、チンと遅過ぎ。隣の駅長は余程ののんびり屋か?
2.その後3打していきなり閉塞扱いに入るのも変。ちゃんと閉塞を解除してからにしなさい。また、電鍵の押し方が不自然。もっと力強く、手はいちいち離さず流れるような動作で。何年駅長やっているのだろうか。え、2〜3日?
 ところがその一方で、画面に映っていない間に信じられない速度でタブレットを取り出し、キャリアに収めている。急に機敏になったのか?
3.ホームではなく室内で運転士にキャリアを渡している。
 これは現場では良く行われるが、本来はホームから運転席の運転士に形状を確認したあと渡す。運転士も受け取ってから喚呼する。それもその後の本編を見るとやっていない可能性が高く、かなり安全に対する姿勢が緩慢であると指摘することも出来るが、終端駅で別区間のタブレットの誤授与がないことを考えれば大目に見られる範囲か。次の駅ではきちんとしていると信じたい。
4.駅長が信号所でリバーを扱う。「下り場内定位〜」。
 リバーの取扱いを腕だけで行っており不自然。駅長はボディービル指向か?特に反位にする時には体全体を使うのだが。なお、この時の喚呼は「下り」「上り」は終端駅なのでなくても良いだろう。省略したりこのようにバカ丁寧だったりするところのアンバランスが面白い。
5.列車発車時に手笛を吹く。
 完全な誤り。駅員は危険を知らせる場合以外手笛は吹かない。恐らく車掌が扉を閉める際に乗客に注意を促して吹くのと取り違えている。
6.時刻だけ熱心に確認。
 他に乗客はいないか、ホームは安全かという最も重要な確認を怠り、ただ出発時刻だけに全神経を集中している。こんな駅長がいたら危険きわまりない。
7.「出発進行!」
 そんな合図はない。この場合車掌がいないワンマン運転なので、黙って出発合図を行う。まあ、「発車」あるいは「出発」くらい言ってもいいが、出発合図は声でするものではないのであくまでおまけ。言うも言わぬもその人次第。おまけに手を斜めに差し出して、見た目もちょっと格好悪い。なにそれ挨拶?(実際にはそれでも良いが、一応格好にはこだわっているのではないかと。)出発合図は手を上にビシッと伸ばす。挨拶ならその後で敬礼を行う。

 もうお分かりと思うが、「出発進行」は運転士が信号を確認して喚呼するもの。

8.出発後すぐに「後部ヨシ!」
 ハテ?これも何のつもりだろうか。確認なら列車が場内(一般には場内信号機を越えた時)を安全に出るまで見送ってから行う。それはそこまでが駅構内であり、駅長の責任範囲だからである。車体の後部を確認したところで意味はない。
9.「信号ヨシ!」
 とことんまでいい加減なので思わず笑ってしまったが、列車が去ったあと信号を確認してどうしようというのだろうか。必要性皆無。
夕陽の中、丹荘駅でのタブレット扱い。
出発指示合図を出しながらも常に安全
を確認。