湿潤療法と栄養療法のコラボレーション

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褥瘡治療における湿潤環境の保持については、以下の利点が確認されています。

① 褥瘡を乾燥させないことによる上皮細胞や組織治癒因子の保護と、上皮細胞の遊走能の向上

② 褥瘡内にある浸出液が、PDGF(Platelet-Derived Growth Factor、血小板由来増殖因子)などをはじめとした細胞成長因子を多量に含むため、湿潤環境は上皮細胞が生着・増殖していくうえで最適な環境であること

③ 組織傷害性のある消毒剤を使用しないことによる、組織だけでなく組織治癒蛋白の保護効果

これらの利点によって、湿潤療法における褥瘡治療において、良性肉芽の形成と治癒期間の短縮が期待される。とくに褥瘡面および褥瘡内に白色ワセリンを塗布または充填することにより、さらに均一な湿潤環境が形成・維持されます。

1. 浅い褥瘡 

 皮膚欠損のない浅い褥瘡(NPUAP分類ⅠまたはⅡ度、National Pressure Ulcer Advisory Panel)は、まず温めた水道水で十分に洗浄し、とくに創周囲は泡立てた弱酸性石鹸で洗浄します。けっしてこすらないように、押し付けるようにガーゼまたは脱脂綿で褥瘡および周囲皮膚の水気を十分にふき取ります。創面に薄く膜が張るように白色ワセリンを塗り、その上から創面より広めにポリウレタンフィルム材を貼付します。浸出液が多くなければ、創の被覆はポリウレタンフィルム材のみとしていますが、多い場合にはガーゼなどを浸出液の吸収目的で上から重ねて用います。創処置は可能なかぎり毎日行うものとしますが、ポリウレタンフィルム材内に浸出液の貯留がなく、フィルムの剥がれがなければ2~3日そのまま経過観察とすることもあります。

2. 深い、またはポケットのある褥瘡 

 深い褥瘡(NPUAP分類ⅢまたはⅣ度)やポケット形成のある褥瘡も、上記と同様に創内および創周囲を水道水で洗浄しますが、とくにポケット内は浸出液や白色ワセリンの残存があるので、より丹念に洗浄します。我々はけっして強い圧力で洗浄することはせず、指でやさしくマッサージするように十分量の水道水で洗浄することを心掛けています。次に、褥瘡周囲の皮膚の水分を十分にふきとります。白色ワセリンは潰瘍形成部およびポケットの容積をある程度推測して、それに見合った量を木ベラですくい取り、創内に充填しています。さらに、その上から創面より十分に広いポリウレタンフィルム材を直接貼付し、漏れ出てくる浸出液は紙オムツなどで吸収しています。最近は、穴あきポリウレタンフイルムを直接紙オムツに張って、褥瘡にあてるようにすると、密着性が高まり、ワセリンの量を減らすこともできます。

湿潤療法を行っている褥瘡は、左図のように周囲皮膚との境界が平坦で、創全体の収縮も良好です。また、肉芽のみずみずしさは良好で、良性、不良肉芽の鑑別も容易です。

 

  

 

 

 

左図のような、本来ならデブリードマンを行うような黒色痂皮も、一部に切開を加えて、十分なドレナージ下に洗浄を繰り返すことで、無血・無麻酔で切除も容易になります。これも、湿潤+ワセリンの自己融解効果です(但し、創傷の専門医師に相談して行いましょう)。

仙骨部のポケット形成する重症褥瘡が感染を合併し、壊死性筋膜炎(ガス壊疽)になってしまい、敗血症性ショックで転院してきた患者さんの経過を供覧します。ショック離脱後に、腰椎麻酔下に広範なデブリードマンを施行しています。手術翌日からポリウレタンフィルム+ワセリン+オムツ療法を開始しました。

良好な肉芽の盛り上がりで、ポケットはすぐに消失しました。

 

栄養状態も改善してくると、肉芽のみずみずしさがさらに増します。

転院先では、ユーパスタ+ガーゼ治療が行われていたようで、明らかに肉芽の状態が異なります。

  

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当院の栄養療法の基本方針です。残念ながら、グルタミンやアルギニンは、褥瘡における効果は確定していないので必須とはしていません。

以下に、栄養療法とのコラボレーションが有効であった2例を提示します。参考にしてください。

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