Refeeding syndrome guidelines

Refeeding syndrome

<病態> 

・ 飢餓状態では、代謝状態は異化に傾いており、主に脂肪とタンパク質を分解してエネルギー源としており、基礎代謝量も20~25%低下している。この状態が続くと、筋肉や脂肪組織がケトン体や遊離脂肪酸に分解されて、エネルギーとして利用される。このため、ケトン体の血中レベルの増加により、脳はエネルギーの主燃料をグルコースからケトン体へ変更し、筋蛋白の崩壊を防ぐために肝臓では糖新生が抑制される。この間、体外からの補給がなく、細胞内ミネラルが消耗される。体内のミネラルを維持するために、腎排泄も減少する。

・ 栄養投与の再開による血糖回復のために、インスリンの上昇とグルカゴンの減少がおこり、糖質・たんぱく質・脂質は全て分解される傾向となる。この際に、リンやマグネシウム、補酵素としてビタミンB1が消費される。具体的には、インスリンの刺激により、カリウムはNa-K ATPase チャンネルを通じて細胞内へ、さらに糖質も細胞内へ取り込まれる。同時に、マグネシウムもリンも細胞内へ取り込まれ、浸透圧にて水分も移行する。これらによって、血中のリン、マグネシウム、カリウムは低下し、電解質バランスの不均衡や基礎代謝の異常をきたす。

・ リンは細胞膜の構造維持に不可欠で、多くの細胞内の酵素や補酵素の構成成分である。さらに、エネルギーとしてATPの形で貯蔵・利用され、Hbにおける酸素運搬にも関与し、腎臓における酸-塩基バランスの緩衝にも重要である。また、マグネシウムもリンと同様にATPの産生に関与し、DNA、RNAやリボソームの構造維持に必要。

参考: 

同化と異化

栄養とは、栄養素を消化吸収し、体構成成分に合成し(同化:アナボリズムanabolism)、また分解(異化:カタボリズムcatabolism)してエネルギーを得る過程と定義できる。

・同化

 グルコースはグリコーゲン合成され、肝臓に72g(300kcal)、筋組織に245g(1000kcal)貯蔵

   血糖維持には、主に肝臓のグリコーゲン利用(12~18時間の絶食で枯渇)。次にタンパク質を異化して利用する。

   筋組織のグリコーゲンは、筋組織の解糖(エネルギー産生)に利用

   脂肪組織は10万kcal貯蔵、過剰な糖質は脂肪酸合成に向かう

   タンパク質には、予備はない

・異化

 すべての栄養素はアセチルCoAに代謝され、クエン酸回路にてATP(エネルギー)産生

   炭素・・・肺から二酸化炭素として排出

   水素・・・水分として尿から排出

   窒素・・・肝臓で尿素回路により尿素へ、腎から尿中へ排泄

Refeeding syndromeの病態

低リン血症

  心血管系…心不全、不整脈、低血圧、心原性ショック

  腎臓系…急性尿細管壊死、代謝性アシドーシス

  筋骨格系…横紋筋融解、脱力、筋痛、呼吸障害(横隔膜障害)

  神経系…せん妄、昏睡、失神、痙攣

  内分泌系…低血糖、インスリン抵抗性、骨軟化症

  血液系…溶血、血小板減少症、顆粒球機能異常

低K血症

  心血管系…低血圧、心室性不整脈、心停止、徐脈、頻脈

  呼吸器系…低換気、呼吸切迫、呼吸不全

  筋骨格系…脱力、全身倦怠、筋攣縮

  消化器系…下痢、嘔気、嘔吐、食思不振、麻痺性イレウス、便秘

  内分泌系…代謝性アルカーロシス

低Mg血症

  心血管系…発作性心房性・心室性不整脈、再分極性交互脈

  呼吸器系…低換気、呼吸切迫、呼吸不全

  神経筋系…脱力、全身倦怠、筋痙攣反射(トルソー、クボスティック)、運動失

調、めまい、知覚異常、幻覚、うつ、痙攣

  消化器系…腹痛、下痢、嘔吐、食欲低下、便秘

  その他…貧血、低Ca血症

低Na血症

  心血管系…心不全、不整脈

  呼吸器系…呼吸不全、肺水腫

  腎臓系…腎不全

  筋骨格系…筋攣縮、全身倦怠、浮腫

ビタミンB1欠乏症

  神経系…ウエルニッケ脳症

  心血管系…慢性心不全、乳酸アシドーシス、脚気心

  筋骨格系…筋力低下

 

Guidelines for the prevention and treatment of adult patients at Risk of developing refeeding syndrome

 

ステップ1: 初期評価

Refeedeing syndromeのリスクにある患者の評価と同定

                  ↓

絶対適応:

✓ 慢性栄養不良の既往

✓ 急性の体重減少(意図的なものを除く)または病気になる前の体重から10%以上の体重減少

✓ 7~10日間以上の絶食または摂食不良

相対適応:

✓ 合併症(例えば、感染症、手術、褥瘡、がんなど)

✓ ストレス(例えば、術後、ICU患者など)

✓ 遷延した飢餓

✓ 神経因性食思不振症

✓ 慢性アルコール中毒

✓ 電解質異常(カリウム、リン、マグネシウム)、長期制酸剤・利尿剤内服

✓ 高齢者

その他…脳卒中、炎症性腸疾患、慢性膵炎、短腸症候群、HIV、DMコントロール不良

          ↓                  ↓

        リスクあり              リスクなし

       栄養士に相談             通常の栄養管理

          ↓

問診及び栄養評価  

    ↓

栄養評価:

1. 体重

2. 体重減少率

3. 食事摂取状況

4. 栄養不良の原因 ―経口または経腸栄養の障害、嚥下困難、腸管機能不全など

          ↓

モニター:

1. 心拍数、血圧、呼吸数、SpO2、意識レベル ― 初期3日間は6時間ごと

2. 体温

3. 心電図モニター(不整脈、カリウムやリン異常)

 

* BMI<16は強く疑う、BMI<18.5は疑う必要あり

* 3~6カ月で15%超の体重減少は強く疑う、10%超は疑う必要あり


ステップ2. 初期管理

Refeeding syndromeの初期管理

                   ↓

1. 敗血症の確認と治療

✓ 敗血症は臨床的に明らかでなくても急激な状態の悪化の説明がそれでつく

✓ 敗血症のスクリーニングは怠らない

✓ 広域スペクトラムの抗菌薬の使用をためらわない

                   ↓

2. 適切な輸液管理

✓ 循環血液量の管理を厳密に行う(心拍数や水分バランスのチェック)

  栄養不良患者は、輸液負荷にて心不全に容易に陥りやすい(例えば、1日2L以上など)

✓ 輸液が必要なのは、経口摂取が足りるまでの初期3日間

✓ 明らかな脱水があっても、初期24時間は1~2Lの輸液にて反応をみて増減

✓ 総輸液量の目標は、30mL/kgを最大とする(通常1.5L/日以下)

✓ 少なくとも6時間ごとに、血圧、脈拍、呼吸数をモニタリングし、心不全を予防

                   ↓

3. 電解質異常の補正

✓ 直近48時間の以下の血中濃度を把握

   BUN、Na、K、Cl、P、Ca、Mg、肝機能、血算

✓ 電解質異常の原因の検索

✓ 心電図のチェック(K < 3.5mmol/L、P < 0.8mmol/L)

✓ 電解質の補正(K < 3.5mmol/L、P < 0.8mmol/L、Mg < 0.5mmol/L、Ca < 2.0mmol/L)

✓ 腎機能障害患者に注意

✓ 特に重症の電解質異常(K < 2.5 mmol/L、P < 0.32 mmol/L、Mg < 0.5mmol/L)では、栄養補給のみでさらに悪化する可能性があり、注意を要する

                   ↓

4. 血糖コントロール

✓ 血糖チェックを1日1~2回以上行う

✓ 低血糖には5%ブドウ糖液にて補正する

                   ↓

5. 体温コントロール

✓ 少なくとも1日1回は体温(できれば深部体温)を測定

✓ 栄養不良患者の多くが低体温を合併、温めた輸液、ドリンクや毛布などで対応

                   ↓

6. ビタミン・微量元素欠乏への対応

✓ ビタミンB1を100mg1日3回、10日または改善するまで継続投与、開始は栄養投与の少なくとも30分前

✓ 総合ビタミン剤、微量元素製剤の適切な補給

ステップ3. Refeeding syndrome患者への栄養補給開始

ゆっくりと栄養補給開始

                   ↓

✓ 投与カロリーは、最初24時間は10kcal/kg/日で開始し、よりリスクの高い患者はさらにゆっくり、少なめに投与

✓ 水分バランスに慎重に!

投与推奨メニュー:

1日目    10kcal/kg/日 (BMI<14または15日超の絶食は、5kcal/kg/日)

       糖質 50~60%、脂質 30~40&、たんぱく質 15~20%

        PO42- 0.5~0.8mmol/kg/日

        K+ 1~3mmol/kg/日

        Mg2+ 0.3~0.4mmol/kg/日

        Na+ <1mmol/kg/日

        水分バランス 0

        ビタミンB1+ マルチビタミンを栄養補給開始の30分前に1回

2~4日目   5kcal/kg/日ずつ増加

        ビタミンB1 100mg 1日3回 + マルチビタミン

5~7日目   20~30kcal/kg/日

        電解質、ビタミン、微量元素、肝機能のチェック

        水分バランス 0

        7日目より鉄補給考慮

8~10日目  30kcal/kg/日以上または必要投与量フル

                   ↓

モニタリング(少なくとも3日間)

                   ↓

✓ 血中BUN、Na、K、Cl、補正Ca、P、肝機能を最低1日1回

✓ 血中Mgを初期は3日おき、落ち着けば1週間に1回

✓ 水分バランス毎日

✓ 血糖測定を1日1~2回以上

✓ 体温、脈拍、呼吸数、SpO2毎日

✓ 血圧6時間ごと

✓ 心電図モニター

 

参考文献:

◆Guidelines for the prevention and treatment of adult patients at risk of developing refeeding syndrome   National Haelth Service 2008

◆National Institute for Health and Clinical Excellence. Nutrition support in adults. Clinical guideline CG32 2006

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